ホームページを作ってもらった会社に連絡がつかない。メールの返信が止まり、電話も通じない。更新したい箇所があるのに、誰にも頼めないまま数か月が過ぎている。
こうした状態から、ご相談をいただくことがあります。
このとき、多くの方が最初に「新しい制作会社を探すこと」から始めます。ただ、探す順番を先にすると、話が途中で止まります。新しい業者が決まっても、ドメイン名の名義が前の制作会社のままなら、移す手続きそのものを申請できません。
この記事では、業者を探す前に確認する4つの名義と、確認結果ごとに何ができるかを整理します。
読み終えると、いま自社が「引き継げる状態」なのか「前の制作会社の協力が要る状態」なのかを、自分で判定できます。
この記事で分かること
- ホームページを引き継ぐために確認する4つの名義が分かる
- 名義の確認結果から、前の制作会社への連絡が必要かどうかを切り分けられる
- 新しい制作会社へ相談するとき、何を伝えれば話が早く進むかが分かる
「連絡が取れない」と「引き継げない」は別の問題
連絡がつかなくても引き継げることがある
制作会社と連絡が取れなくなったとき、サイトごと失われたように感じます。実際には、そうとは限りません。
引き継げるかどうかを決めているのは、連絡がつくかどうかではありません。契約が誰の名義になっているかです。
連絡がつかない + 名義が自社 → 前の制作会社なしで進められる 連絡がつかない + 名義が前の会社 → 前の会社の関与が要る
同じ「連絡が取れない」でも、この2つは打つ手がまったく変わります。先に切り分けないまま新しい業者を探すと、見積もりを取った後で作業に入れないことが分かります。
なぜ名義が制作会社になっていることがあるのか
制作を一式で任せたとき、ドメインの取得やサーバーの契約も含めて代行されることがあります。手続きの手間が減るため、依頼した側にとっては便利な進め方です。
このとき、契約の名義を誰にするかは、制作会社ごとに扱いが分かれます。自社名義で取得して引き渡す会社もあれば、自社の管理下に置いたまま運用する会社もあります。
契約書に名義の定めがなければ、依頼した側が後から知ることはほとんどありません。連絡が取れなくなって初めて、名義を確認する状況になります。
放置すると起きること
名義の確認をしないまま時間が過ぎると、次の順で選択肢が減ります。
| 経過 | 起きること |
|---|---|
| 更新できない状態が続く | 掲載内容が実態と合わなくなる |
| ドメインの更新期限が来る | 更新の申請ができず、期限切れになる |
| 期限が切れる | 同じドメイン名を第三者が取得できる状態になる |
期限切れの前と後では、打てる手が変わります。名義の確認は、更新期限までに済ませてください。
確認する4つの名義
引き継ぎで問題になるのは、次の4つです。まとめて「サイトを預かっている場所」ですが、それぞれ別の契約で、名義も別々に決まります。
| # | 対象 | 何が決まるか | 名義が他社だと |
|---|---|---|---|
| 1 | ドメイン名 | サイトの住所 | 移転・更新の申請ができない |
| 2 | サーバー | サイトの置き場所 | 契約者以外は解約・移行を申し込めない |
| 3 | 管理画面 | 中身の更新 | ID・パスワードがなければ入れない |
| 4 | サイトのデータ | 記事・画像・設定 | 取り出しの可否が契約次第になる |
4つのうち、最初に確認するのはドメイン名です。 他の3つは代わりを用意できますが、ドメイン名だけは同じものを使い続けたい場合、代わりがききません。
4つを混同しない
相談の場面では、この4つがまとめて「ホームページ」と呼ばれます。実際には管理する会社が別々のことがあります。
ドメイン名 レジストラ(登録の取次事業者)と契約 サーバー レンタルサーバー会社と契約 管理画面 サーバー上のソフトの設定 データ サーバーの中に置かれたファイル
制作会社は、この4つの手続きを代行していた立場です。制作会社と連絡が取れなくても、契約先そのものは動いています。名義が自社であれば、契約先に直接問い合わせられます。
ドメイン名の名義で何が決まるのか
申請できるのは登録者だけ
ドメイン名には「登録者」という区分があります。日本の「.jp」で終わるドメイン名を管理しているJPRS(株式会社日本レジストリサービス)は、登録者の権限を規則で定めています。
汎用JPドメイン名登録等に関する規則の第7条第3項は、次のとおりです。
登録担当者は、汎用JPドメイン名の登録、登録更新、移転、廃止、その他の申請および届け出、当社からの通知の受領、この規則に定める登録料・登録更新料および費用の支払い、その他この規則に定める事項についてすべての権限および権利を有し義務を負う。
移転も、更新も、廃止も、申請できるのは登録者です。登録者でない人が、名義を自分に移す手続きを単独で始めることはできません。
同じ規則の第25条第1項は、移転の条件をこう定めています。
登録者は、汎用JPドメイン名の移転に関する登録者と第三者の合意がある場合、当社所定の方式によって申請を行い、汎用JPドメイン名の移転登録をすることができる。
名義を移すには、現在の登録者との合意が要ります。ここが、連絡が取れない状況で最初につまずく箇所です。
管理する会社を変えるときも確認がある
ドメイン名の管理を別の事業者に移すときも、登録者への確認が入ります。JPRSは手続きの流れを次のように説明しています。
変更元の指定事業者から登録者へ、指定事業者変更の意思確認が行われます
登録者は、変更元の指定事業者へ指定事業者変更の「承認」または「不承認」を回答してください
確認の宛先は登録者です。名義が前の制作会社であれば、確認はその会社に届きます。依頼した側には届きません。
「.com」の場合も考え方は同じ
「.com」や「.net」で終わるドメイン名は、JPRSではなくICANNの方針に沿って管理されています。移管には登録者の承認が必要という点は共通です。
ドメイン名の末尾によって手続きの窓口は変わりますが、登録者でなければ動かせないという構造は変わりません。
誤解を避けるために
登録は、そのドメイン名を使う権利の割り当てです。土地や建物のような所有権とは別のものです。規則にも、登録はドメイン名の一意性を意味し、それ以外の意味を持たない旨が定められています。
「買い取ったのだから自分のものだ」という説明は成り立ちません。判断の材料になるのは、登録者に誰の名前が入っているかだけです。
名義の調べ方
誰でも確認できる情報がある
ドメイン名の登録者は、公開されている情報から確認できます。JPRSの検索ページ(WHOIS)で自社のドメイン名を入力すると、登録者名の欄が表示されます。
見るのは次の3か所です。
| 欄 | 見方 |
|---|---|
| 登録者名 | 自社名か、制作会社名か |
| 登録年月日 | いつから使っているか |
| 有効期限 | あと何か月で更新期限が来るか |
登録者名に自社名が入っていれば、ドメイン名は自社で動かせます。制作会社名が入っていれば、その会社の関与が必要です。
有効期限を先に見る
登録者名より先に見てほしいのが、有効期限です。期限までの残り時間が、動ける範囲を決めます。
残り6か月以上 順を追って確認できる 残り3か月未満 確認と並行して、更新の手当てを進める 期限切れ後 同じドメイン名を使い続けられないことがある
期限が近い場合は、名義の確認と更新の手続きを同時に進めてください。順番に進めると間に合わないことがあります。
サーバーの契約者を調べる
サーバーは、契約している会社に問い合わせて確認します。どこと契約しているか分からない場合は、過去の請求書やクレジットカードの明細に社名が残っていることがあります。
請求が制作会社宛てになっていれば、契約者は制作会社です。自社に直接請求が来ていれば、契約者は自社です。支払いの流れが、契約者を示しています。
確認結果ごとにできること
4つの名義を確認すると、状況が3つに分かれます。
| 状況 | ドメイン名の名義 | できること |
|---|---|---|
| A | 自社 | 前の制作会社を待たずに進められる |
| B | 前の制作会社 | 名義変更の合意を得る手続きが要る |
| C | 確認できない | まず登録者の特定から始める |
Aの場合:前の制作会社を待たずに進められる
ドメイン名が自社名義であれば、管理する事業者を変える手続きを自社で申請できます。サーバーの契約者も自社であれば、サーバー会社に直接問い合わせて、データの取り出しや移行を進められます。
このとき、前の制作会社への連絡は必須ではありません。連絡がつかないことは、作業を止める理由になりません。
管理画面のパスワードが分からない場合も、サーバーの契約者であれば再設定できることがあります。手順はサーバー会社によって異なるため、契約先に確認してください。
Bの場合:合意を得る手続きが要る
ドメイン名が前の制作会社の名義であれば、名義変更に合意が要ります。連絡が取れない状態では、ここが止まります。
連絡の手段を変えて試す価値はあります。メールが通じない場合でも、登記上の所在地宛ての書面で連絡が付くことがあります。会社が事業を続けているかどうかは、法人登記の情報から確認できます。
それでも合意が得られない場合、同じドメイン名を使い続けることは難しくなります。この場合、選ぶことになるのは「別のドメイン名で作り直すか」「同じドメイン名を待つか」です。 どちらが自社にとって損が小さいかは、そのドメイン名がどれだけ使われているかで変わります。
名刺・封筒・看板に印刷している → 変更の影響が広い 検索からの流入が売上につながっている → 変更の影響が大きい 社内の連絡と取引先への案内が中心 → 変更の影響は限定的
Cの場合:登録者の特定から始める
登録者名の欄に、聞いたことのない会社名や個人名が入っていることがあります。制作会社がさらに別の会社へ手続きを委託していた場合に起きます。
この場合は、登録者名の会社に連絡を試みます。制作会社ではなく、登録者本人が手続きの相手です。間に何社入っていても、申請できるのは登録者だけです。
今すぐ新しい業者を探さなくてよい場合
ここまで、引き継ぎの手続きを説明しました。ただし、すべての状況で急いで業者を探す必要はありません。
サイトが今も表示されていて、更新の予定がない場合
サイトが表示されていて、掲載内容を変える予定が当面ない場合、急いで移す必要はありません。先にやることは、有効期限の確認だけです。
期限まで余裕があるなら、名義の確認を済ませた上で、次の更新の時期に合わせて動けます。表示されている状態を維持しながら、準備の時間を取れます。
ただし、更新期限が近い場合は別です。期限が切れると選択肢が減るため、期限の確認だけは先に済ませてください。
掲載内容がごく少ない場合
ページ数が数ページで、掲載内容も会社名と連絡先が中心の場合、引き継ぎの手続きにかける手間より、作り直しのほうが早く済むことがあります。
引き継ぐ場合 名義の確認 → 合意 → 移管 → 移行 → 動作確認 作り直す場合 内容を用意 → 作る → 公開
引き継ぎは、既存の内容に価値があるときに意味を持ちます。中身が少ないサイトでは、引き継ぎの手続き自体が目的になってしまいます。
判断の目安は、そのサイトから問い合わせや申し込みが来ているかどうかです。来ていないサイトを、手間をかけて引き継ぐ理由は多くありません。
前の制作会社と連絡が取れる見込みがある場合
連絡が数週間途絶えているだけで、廃業や事業停止が確認できていない場合、まず連絡を試みる余地があります。担当者の交代や体調不良で、一時的に止まっていることがあります。
この段階で新しい業者に依頼すると、二重に契約が走ることがあります。 連絡が取れないと判断するのは、登記の確認と書面での連絡を試みた後で構いません。
相談するときに伝えること
新しい制作会社に相談するとき、次の4つが分かっていると、その場で対応できるかどうかを判断してもらえます。
| 伝えること | 分からない場合 |
|---|---|
| ドメイン名 | サイトのURLを伝える |
| ドメイン名の登録者名 | 分からないと伝えて構わない |
| サーバー会社と契約者 | 請求書の有無を伝える |
| 管理画面に入れるかどうか | 入れない旨を伝える |
すべてを調べてから相談する必要はありません。分からない箇所を「分からない」と伝えるほうが、状況を正確に伝えられます。
調べようとして管理画面の設定を触ると、表示されている状態を保てなくなることがあります。心当たりのない設定は変えずに、そのままの状態で相談してください。
引き継ぎを断られることがある理由
相談した結果、引き継ぎを断られることがあります。断られる理由は、次のいずれかであることが多いものです。
名義の確認が取れない → 手続きを始められない 作られ方が特殊で中身が読めない → 直す範囲を見積もれない 資料が一切残っていない → 動作を確認しながら進むことになる
実データでも、次のような状態からの相談があります。制作した会社が事業を終えていて、ソースコード以外の資料やマニュアルが残っていない状態です。この場合、引き継ぎの可否は中身を見てからでないと判断できません。
断られた場合でも、名義の確認結果は次の相談でそのまま使えます。確認した内容は、相談先が変わっても無駄になりません。
よくある質問
制作会社が廃業した場合、ドメイン名はどうなりますか
登録者が廃業した会社のままであれば、更新の申請をする人がいない状態になります。有効期限が来ると、そのまま期限切れになります。
期限切れの前であれば、登記の情報をもとに連絡を試みる余地があります。期限までの残り時間が、取れる手段を決めます。
管理画面のパスワードが分からない場合はどうすればよいですか
サーバーの契約者が自社であれば、サーバー会社を通じて再設定できることがあります。手順は契約しているサーバー会社によって異なります。
契約者が前の制作会社であれば、サーバー会社は依頼した側からの申し出に応じられません。この場合も、確認する順番は名義が先です。
サイトのデータは自社のものではないのですか
掲載している文章や画像を自社で用意した場合、その内容は自社のものです。ただし、サーバーの中にあるファイルを取り出せるかどうかは、サーバーの契約者が誰かで決まります。
内容の権利と、取り出せるかどうかは別の話です。取り出しの可否を決めているのは契約です。
同じドメイン名をあきらめた場合、検索からの流入はどうなりますか
別のドメイン名で新しく公開した場合、検索からの流入は元の状態には戻りません。どの程度戻るかは、掲載内容と公開後の期間によって変わります。
戻る量を事前に見積もることはできません。判断の材料になるのは、現在そのサイトから問い合わせが来ているかどうかです。
名義の確認は自社でできますか
ドメイン名の登録者名は、JPRSの検索ページで確認できます。サーバーの契約者は、請求先の記録から確認できます。
どちらも、専門の知識がなくても確認できる範囲です。確認だけであれば、業者に依頼する前に自社で済ませられます。
まとめ:最初に決めること
ホームページを引き継げるかどうかは、連絡がつくかどうかでは決まりません。決めているのは、ドメイン名の登録者が誰かです。
新しい業者を探す前に、次の2つを確認してください。
1 ドメイン名の有効期限(残り時間が動ける範囲を決める) 2 ドメイン名の登録者名(自社か、前の制作会社か)
登録者が自社であれば、前の制作会社を待たずに進められます。登録者が前の制作会社であれば、合意を得る手続きから始まります。この切り分けができていれば、相談したその場で、対応できるかどうかを判断してもらえます。
まずは、自社のドメイン名をJPRSの検索ページで調べて、登録者名と有効期限を確認してください。
登録者名に見覚えのない社名が入っていて、どこから手をつけるか判断しにくい場合は、[ホームページの修理・改修]のページから相談できます。
著者:MASTER key AX事業部
出典
- 株式会社日本レジストリサービス「汎用JPドメイン名登録等に関する規則」第7条第3項、第25条第1項
https://jprs.jp/doc/rule/rule-wideusejp.html
- 株式会社日本レジストリサービス「ドメイン名の管理指定事業者の変更」
https://jprs.jp/about/dom-rule/agent-change/index.html
- ICANN「Transfer Policy」
https://www.icann.org/en/contracted-parties/accredited-registrars/transfer-policy-01-06-2016-en
