AIを使いたいという話は出ている。ただ、自社のどの仕事に当てるかが決まらない。この状態で止まっている会社があります。
「うちには合わないのではないか」と感じたまま、検討が進まないこともあります。
ただ、公的な調査を読むと、用途を選んでも、効果が出るかは決まっていませんでした。 同じ用途でも、3割弱の会社は効果が出ていません。
分かれ目は、AIの答えが正しいかを判定できる人が社内にいるかどうかです。
読み終えると、自社のどの作業なら判定できる人がいるかで、試す順番を決められます。
この記事で分かること
- 用途を選ぶだけでは効果が決まらない理由が、数値で分かる
- 自社のどの作業なら「正しいか判定できる人」がいるかを切り分けられる
- いま始めなくてよい場合が分かり、無理に進めずに済む
いま何社が使っているか
半数以上が導入または試験利用
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2026年4月から6月に実施した調査では、AIの導入状況はこうなっています。
| 状況 | 回答率 |
|---|---|
| 導入している | 42.3% |
| 現在、試験利用をしている | 15.7% |
| 合計 | 58.0% |
出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2026年7月30日公開、2026年8月4日最終更新) https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html (参照日 2026-08-26)
ただし、規模によって差がある
同じ調査で、従業員規模別に見ると差が出ます。
「100 人以下」の企業で「関心はあるがまだ特に予定はない」の回答率が 34.6%と高くなっている
100人以下では、3社に1社が「関心はあるが予定はない」段階です。
生成AIは1年で2倍に増えた
同調査は、生成AIの導入を経年で比べています。
2024年度 22.6% 2025年度 44.0%
1年で約2倍になっています。
何に使われているか
上位3つは、すべて文書と情報の作業
AIを導入・試験利用・検討している企業に、用途を聞いた結果です。
| 用途 | 回答率 |
|---|---|
| 文書・音声の要約・翻訳・校正 | 82.5% |
| 文書・レポートの作成(社内・社外) | 80.5% |
| 情報検索・収集・分析・レポーティング | 77.0% |
| 自社製品・サービスの高度化 | 10.9% |
| 生産・物流・サービス提供の計画支援 | 6.0% |
出典:同上
上位と下位で13倍の差がある
82.5%と6.0%。差は13倍あります。
同調査は、この状況をこう述べています。
文書作成や情報収集といった個人の業務の効率化用途が中心となっている
事業の高度化や新たな価値創出につながる用途での利活用はまだ限定的となっている
「AIで事業を変える」段階に届いている会社は、まだ少数です。
使えている用途と、使えていない用途
用途によって、効果の出方が違う
同調査は、用途別に「効果が出ているか」も集計しています。
「データ分析・予測・インサイト抽出」および「プログラムコードやシステム開発支援」は
効果が出ている割合が高いが、ともに「効果が出ていない」も 3 割弱ある。
同じ用途でも、3割弱は効果が出ていません。
この数字が意味すること
同じ用途を選んだのに、結果が分かれている ↓ 用途の選び方では、効果が決まらない ↓ 分かれ目は、用途の外にある
その分かれ目が、次章の課題に出てきます。
導入した会社が詰まっている場所
課題の1位は人材、2位は理解不足
AIを導入・運用している企業が挙げた課題です。
| 課題 | 回答率 |
|---|---|
| 専門人材が不足している | 50.1% |
| 生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している | 45.8% |
| 適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい | 39.7% |
出典:同上
同調査は、この3つを「人材不足・リテラシー不足・ガバナンス整備の遅れが三大課題」と整理しています。
注目すべきは2位
1位の「専門人材が不足」は、社内にITに詳しい人がいない会社では導入前から分かっていることです。
しかし2位の「効果やリスクに関する理解が不足している」45.8%は、導入した会社が、導入後に挙げている課題です。
つまり、入れてから「何ができて何ができないか」が分からないままになっている会社が、半数近くあります。
これが、用途の外にある分かれ目
前章で「同じ用途でも3割弱は効果が出ていない」と書きました。
理解が追いつかないまま入れると、効果が出ているかどうかを判定できません。 判定できなければ、続けるかどうかも決められません。
つまり、こうなります。
用途を選ぶ → 効果が出るかは、まだ決まらない 判定できる人がいる → 効果が出ているかが分かる 判定できる人がいない → 出ていても、出ていなくても、分からないまま
判定できる人とは、技術に詳しい人ではありません。 いまその仕事をしていて、答えが正しいかを知っている人です。
いま始めなくてよい場合
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
次の場合は、いま無理に始めなくて構いません。
社内でまだ何も動いていない場合
同調査は、DXの取組状況別にAIの導入率を見ています。
全社的にDXに取組んでいる企業 →「導入している」が 70.8% DXに取組んでいない企業 →「関心はあるがまだ特に予定はない」が 40.8%
同調査は「DXへの取組状況とAI導入が大きく関係している」と述べています。
社内で何も動いていない状態でAIだけを入れても、使う場面が社内にありません。
年に数回しか発生しない作業の場合
効果を確かめるまでに数か月かかります。この作業は後回しで構いません。
毎週くり返している作業なら、2週間で結果が分かります。
間違いがそのまま外に出る作業の場合
課題の2位が「効果やリスクに関する理解が不足している」45.8%でした。
理解が追いつかないうちに、顧客へ自動送信する文書を任せる必要はありません。 最初は、人が結果を見て直せる社内向けの作業だけで十分です。
逆に、いま始めてよい場合
・結果が正しいかを判定できる人が社内にいる(これが最優先) ・毎週くり返している ・上位3つの用途(要約・文書作成・情報検索)に当てはまる ・間違っても人が気づける
この4つがそろっていれば、試す価値があります。
判断に迷う場合
自社の作業がどこに当たるか、社内だけで判断しにくいことがあります。
そういう状態でも、何から見ればよいかの整理から相談できます。
よくある質問
Q. 何も決まっていない状態で相談してもよいですか
はい。何を作るか決まっていない段階からご相談いただけます。 先に困っていることをお聞きし、そのうえで何が向いているかを整理します。
Q. 社内にITに詳しい人がいませんが、進められますか
進められます。ただし、AIの答えが正しいかを判定できる人は必要です。 それは技術に詳しい人ではなく、いまその仕事をしている人です。
Q. どのくらいで結果が分かりますか
毎週くり返している作業なら、10件から20件で試して2週間程度です。 試す前に「何割正しければ続けるか」を決めておくと、判断が早くなります。
Q. AIを入れれば人を減らせますか
同調査では、AIの用途の上位3つがすべて文書と情報の作業でした。 いまの段階で使えているのは、人がやっている作業の一部分です。 人を減らす前提で計画すると、想定と合わなくなる可能性があります。
まとめ
用途を選んでも、効果が出るかは決まりません。 同じ用途を選んだ会社でも、3割弱は効果が出ていないと報告されています。分かれ目は、AIの答えが正しいかを判定できる人が社内にいるかどうかです。判定できる人とは技術に詳しい人ではなく、いまその仕事をしている人です。まず、その人が関われる作業から選んでください。社内でまだ何も動いていない段階なら、いま無理に始めなくて構いません。
「何から見ればよいか分からない」「うちに合うか判断できない」という状態でも、整理するところからご相談いただけます。見積もりの前に、何ができて何が難しいかをお伝えします。
